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治療と仕事の両立支援とは?中小製造業が最初に整える5つのこと【2026年】

「通院が必要だと相談されたら、誰が話を聞くのか」
「現場の人数が少ない中で、勤務や作業をどう調整するのか」
治療と仕事の両立支援は、人事部のある大企業だけの課題ではありません。
経験のある社員が働き続けられる環境を考えることは、中小製造業でも大切なテーマです。
2026年4月から、治療と就業の両立支援に関する取組は事業主の努力義務となっています。
本記事では制度の位置づけを確認し、専任の担当者がいない職場でも着手しやすい5つの準備を紹介します。
- 治療と仕事の両立支援について
- 中小製造業が最初に整える5つのこと
- 相談を受けた時の進め方と職場で始める具体的な一歩
この記事を書いた人

日下克野
理学療法士/健康経営エキスパートアドバイザー
- 株式会社Under The Sun代表取締役。企業専属の外部健康管理アウトソーシング『BizWelly』総合監修。理学療法士としての臨床経験と学生時代からの経営の勉強を活かし、中小企業向けに健康施策を通して利益を作る健康経営を牽引している。単なるアドバイスではなく、経営戦略として現場の環境改善から安全衛生委員会の事務局支援まで「実働する医療専門家チーム」を率い、健康投資を企業の確実な利益に変える組織構築をサポートしている。
治療と仕事の両立支援とは
治療と仕事の両立支援は、治療を受ける社員が、健康や治療の状況に応じて就業を続けられるよう、職場の体制や仕事の進め方を整える取組です。「病気になったらすぐに退職する」「本人が無理をして同じ働き方を続ける」という二択で考えず、本人と関係者で対応を検討します。
ただし、会社が病気の診断や治療方針を決めるものではありません。就業の可否や必要な配慮については、本人の意向を踏まえ、必要に応じて主治医や産業保健スタッフ等の専門的な意見を得ながら考えます。本人の希望だけ、会社の都合だけで結論を急がないことが基本です。
厚生労働省の「治療と就業の両立支援指針」は2026年2月10日に告示され、同年4月1日から適用されています。制度の説明は、旧ガイドラインや改正前の解説だけで済ませず、現行の指針を参照しましょう。
出典:厚生労働省「治療と就業の両立支援指針」。
2026年4月からの努力義務をどう受け止めるか
労働施策総合推進法の改正により、2026年4月1日から、職場における治療と就業の両立支援の取組が事業主の努力義務となっています。これは、事業主が必要な措置を講じるよう努めることを求めるものです。「努力義務だから何もしなくてよい」と捉えたり、逆に「社員が希望する勤務方法をすべてそのまま実現しなければならない」と説明したりせず、制度と職場の実情を踏まえて対応を考えます。
最初から完成した仕組みを作る必要はありません。まずは相談を受ける入口、関係者へつなぐ方法、仕事を調整する際の確認事項を整理しましょう。個別の法的判断や就業の可否を、一般向けの記事だけで決めないことも大切です。
出典:宮城労働局「治療と就業の両立支援関係」(全国制度の施行時期・位置づけの説明を参照)。
中小製造業が最初に整える5つのこと
最初に整える5つのこと|一覧
- 相談先を決める:最初に話を聞く人と、不在時の連絡先を明確にする
- 相談後の流れを整理する:何を確認し、誰につなぐかを共有する
- 健康情報の取扱いを決める:担当者・利用目的・保存場所・共有範囲を確認する
- 仕事の調整案を洗い出す:勤務時間・作業負担・引継ぎなどの選択肢を考える
- 振り返り日を設定する:対応後も本人と現場の状況を確認し、見直す
以下で、それぞれの進め方を解説します。5つの項目は実務上の提案であり、法定のチェックリストではありません。
1.相談を受ける人と、不在時の連絡先を決める
「何かあれば相談して」と伝えていても、相手や連絡方法が曖昧では相談につながりにくくなります。総務、経営者、上司など、最初に相談を受ける人を決め、社員が確認できるようにします。相談を受けた担当者が、その場ですべてを判断する必要はありません。
少人数の会社では、担当者が休みの日もあります。不在時の連絡先や、上司には話しにくいときの別の入口も検討するとよいでしょう。「相談すること」と「詳しい健康情報を全員へ伝えること」は分けて考えます。
今週できる確認は、社員向けの案内を見直し、相談先と連絡方法が書いてあるかを確かめることです。窓口が実際に機能するか、担当者にも役割を共有しておきます。
2.相談を受けてからの進め方を簡単に整理する
対応する人によって説明が変わると、本人も現場も迷います。相談を受けた後に何を確認し、誰へつなぎ、いつ次の話し合いをするのかを、短い流れにまとめておきましょう。
- 本人が困っていることと、相談したいことを聞く
- 仕事の内容、通院に伴う調整、関係者への連携の必要性を整理する
- 必要に応じて専門家の意見を得る方法を検討する
- 試す対応、担当、見直す時期を相談する
これは進め方の一例です。社員へ一律に詳しい病名や治療内容の提出を求める手順にしないようにします。また、担当者が独断で「その病気なら働けない」「この工程なら問題ない」と判断しないことも重要です。
3.健康情報を誰が扱うかを決める
支援をしたいという気持ちから、必要以上の人へ情報を共有してしまうことがあります。本人の健康に関する情報は、取扱者、利用目的、保存場所、関係者へ伝える範囲を整理して扱いましょう。本人への説明や同意が必要となる場面も含め、公的資料と社内の取扱いを確認します。
現場で共有する必要があるのは、作業や勤務の調整事項である場合もあります。詳しい病名や治療経過を伝えなくても調整できないか、本人と確認しながら考えます。朝礼資料、共有ホワイトボード、誰でも見られるチャットへ個人の健康情報を書き込む運用は避けてください。
本記事の確認表には、個人の病名や検査結果を書き込む必要はありません。具体的な健康情報の保管・共有を伴う仕組みを作る場合は、個人情報の取扱いに詳しい専門家やエンジニアへ相談してください。
4.現場の仕事を調整する選択肢を洗い出す
製造業では、勤務時間だけでなく、工程、立ち作業の長さ、重量物の取扱い、交替勤務、休憩の取り方など、仕事の条件を具体的に把握することが役立ちます。ただし、以下は調整を検討する視点であり、特定の社員にそのまま適用する指示ではありません。
| 確認する視点 | 検討することの例 |
|---|---|
| 通院と勤務 | 通院の予定と勤務の調整が必要か |
| 作業の負担 | 同じ姿勢の継続や運搬作業など、調整を検討する部分はあるか |
| 休憩・働く時間 | 休憩の取り方や勤務時間について確認が必要か |
| 仕事の引継ぎ | 一人に集中している作業を、他の人へ引き継げるか |
| 確認する相手 | 本人、現場管理者、主治医等の間で、何を確認する必要があるか |
例えば、特定の作業を一人しか担当できない場合には、その工程の引継ぎ方法を整えることが、相談後の調整を考える土台になります。治療中の社員にだけ負担を求めず、周囲の社員へ仕事が集中しないかも確認しましょう。
作業を変更すれば必ず就業できる、というものではありません。安全や品質、本人の状態、事業場の実情を踏まえ、必要な専門家の意見を得て検討します。
5.対応を決めた後の振り返り日を設定する
話し合って対応を決めても、実際に始めると想定していなかった困りごとが出ることがあります。「決めたので終わり」にせず、本人と関係者が確認する機会を設けましょう。
- 決めた勤務や作業の調整が、実際に行われているか
- 本人が相談したいことを伝えられているか
- 現場の他の社員へ負担が偏っていないか
- 専門家への再確認や、対応の変更が必要か
確認の頻度は状況に応じて決めます。治療や体調の変化があったときの連絡方法も相談しておくと、変更が必要な際に話し合いやすくなります。改善の記録と個人の健康情報は、共有する目的や範囲を分けて扱います。
最初の一歩を、担当と期限まで決める
制度の資料を読むだけでは、現場の動きは変わりません。まずは個人の情報を集めずに確認できる、社内の体制から点検すると着手しやすくなります。
| 今週確認すること | 完了の目安 |
|---|---|
| 相談先と連絡方法 | 社員が確認できる案内がある |
| 担当者の役割 | 最初に受ける人と、次につなぐ人が決まっている |
| 情報の取扱い | 個人の健康情報を誰が扱うか確認している |
| 次の確認日 | 担当と振り返りの予定が決まっている |
全部を同時に完成させる必要はありません。例えば「今週は総務担当が相談先の案内を確認し、来週の打ち合わせで不足を共有する」と、実行することを一つ決めます。この例は進め方の提案であり、法定の期限ではありません。
よくある疑問
少人数の会社でも、窓口を決める意味はありますか?
人数が少ない職場でも、「誰に・どう連絡するか」が決まっていると対応の出発点が明確になります。専任者を置くことだけを目標にせず、兼務する担当者が一人で判断を抱え込まない進め方を考えましょう。
会社が治療の内容まで判断するのでしょうか?
診断や治療は医療機関の役割です。会社は本人の意向や必要な専門的意見を踏まえ、職場での対応を検討します。医学的な判断を管理者や総務だけで代行しないようにしてください。
まとめ・結論|まずは「誰に、どう相談するか」を明確にする
治療と仕事の両立支援で最初に大切なのは、相談の入口を明確にし、状況に合わせて仕事の調整を続けられる体制を整えることです。2026年4月からの努力義務を踏まえ、会社だけで医学的な判断をせず、本人の意向と必要な専門的意見をもとに進めましょう。
本記事で整理したのは、①相談先、②相談後の流れ、③健康情報の取扱い、④仕事の調整案、⑤振り返り日の5つです。全部を一度に完成させる必要はありません。まず今週、相談先と連絡方法が社員に伝わっているかを確認し、見直す担当者を決めてみてください。
BizWellyは、企業の健康経営を実装する社外健康管理室として、課題の整理と継続できる仕組みづくりを支援しています。何から整理すればよいか迷う場合は、お問い合わせページからご相談ください。フォームには病名・検査結果など、個人の詳しい健康情報を記載しないでください。
参考資料
- 厚生労働省「治療と仕事の両立について」
- 厚生労働省「治療と就業の両立支援指針」(2026年2月10日告示、2026年4月1日適用)
- 宮城労働局「治療と就業の両立支援関係」
※本記事は制度の一般的な解説と職場改善の提案です。
個別の就業判断・法的判断は、関係する専門家へ確認してください。
