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健康経営とは何か?中小企業が知っておくべき基本と導入メリットについて解説
「健康経営」という言葉を耳にする機会が増えていますが、「具体的に何をすればよいのかわからない」「自社に本当に必要なのか判断できない」とお感じの方も多いのではないでしょうか。
近年、健康経営に取り組む企業は急速に増加しています。対応が遅れると、従業員のパフォーマンス低下や採用・定着面での競合他社との差につながりかねません。経営課題として早めに理解しておくことが重要です。
この記事では、健康経営の定義・取り組む背景・メリット・実際の進め方まで、基本を体系的に解説しています。
ぜひ最後までお読みいただき、自社の健康経営推進にお役立てください。
健康経営とは
健康経営とは、従業員の健康を「管理すべきコスト」ではなく「企業の成長を支える投資」として捉える経営の考え方です。
その定義と成り立ちを理解することが、自社での取り組みを考えるうえでの第一歩となります。
健康経営の定義
経済産業省は、健康経営を次のように定義しています。
「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待される。」
出典:経済産業省
つまり健康経営とは、従業員一人ひとりの健康管理を企業が経営課題として捉え、組織として戦略的に取り組む「健康への投資」のことです。
以前は、健康管理は個人が行うものという考え方が一般的で、健康診断などは企業にとってコストとして認識されていました。
しかし近年では、従業員の健康を積極的に支援することが、生産性向上や組織の活性化を通じて企業全体の利益に還元されるという考え方が広まっています。
健康経営の歴史
健康経営の起源は、1991年のアメリカにあります。
組織心理学者ロバート・H・ローゼン博士が著書『The Healthy Company』のなかで、従業員の健康状態が企業の生産性や業績に影響を及ぼすという「ヘルシー・カンパニー思想」を提唱したことが始まりです。
この発想がのちの「ウェルネス経営」や、日本の「健康経営」へとつながっていきます。
一方、日本では1995年に高齢社会対策基本法が制定され、高齢化の急速な進展への懸念が社会全体で高まっています。
出典:内閣府
労働安全衛生法によって事業者には労働者の健康診断が義務付けられていたものの、当時は「やりっぱなし・ほったらかしの健診」とも言われるように、健康診断を受診させること自体が目的となっていました。
異常所見者への事後対応や健康改善への取り組みが不十分なまま、費用を負担しながらも効果が得られない状況が続いていたのです。
出典:厚生労働省リーフレット「労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう」
その後、2000年には厚生省(現・厚生労働省)が「健康日本21」を開始し、健康づくりの視点が個人から社会・企業へと広まり始めます。
出典:
そして2006年にNPO法人健康経営研究会が設立され、「健康経営」という言葉が日本で正式に使われ始めます。
その後、需要がさらに加速し、健康経営は国家戦略として位置づけられ、制度化が進んでいき、現在では健康経営は大企業だけの取り組みではなく、企業規模を問わない経営スタンダードとして定着しつつあります。
参考:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/003_s02_00.pdf
参考:https://www.shinko-jp.com/column/kenkokeiei-dojo-history/
健康経営が注目される背景
健康経営がこれほどまでに注目されるようになった背景には、日本の社会問題が大きく関係しています。
少子高齢化、働き方への意識の変化、国民医療費の影響など、さまざまな流れが重なり合うことで、従業員の健康を「経営課題」として捉える動きが加速してきました。
①少子高齢化による深刻な労働力不足
少子高齢化という大きな社会問題に、日本が直面していることは多くの方が実感されているのではないでしょうか。なかでも深刻なのが、15〜64歳の生産年齢人口の急減による労働力不足です。
1995年には約8,700万人いた働き手は、その後減少を続け、2015年には約7,500万人に。
20年間で約1,200万人も減少した計算です。
さらに、総務省の調査によると、2030年には約6,800万人まで急減すると予測されており、採用難や労働力不足は今後も深刻化することが想像できるでしょう。
出典:総務省
若い働き手が減り続けるなかで、新たな人材を確保し続けることに限界があります。
だからこそ、今いる従業員が心身ともに健康で長く活躍できる環境を整えることが、企業の持続的な成長に欠かせない経営課題として浮かんできました。
人手不足への備えとして、健康経営に取り組む企業が増えているのはこうした背景があります。
参考:https://hr.ds-b.jp/what-is-healthy-company/
②定年延長と職場の高齢化が新たな経営課題
労働力不足への対応策として、高齢者の就労継続が社会全体で推進されています。
ITを活用した生産性向上や外国人労働者の受け入れ、女性の就業継続支援など複数の取り組みが進められていますが、そのひとつが高齢者の雇用延長です。
1.65歳までの雇用確保(義務)
高年齢者雇用安定法により、企業は希望するすべての従業員が65歳まで働き続けられるよう、以下のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。
- 定年を65歳以上に引き上げる
- 65歳までの継続雇用制度(再雇用・勤務延長)を導入する
- 定年制を廃止する
2025年4月からはこれまでの経過措置が終了し、中小企業を含むすべての企業に完全適用されています。
出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置」
2.70歳までの就業機会確保(努力義務)
2021年4月の法改正では、70歳までの就業機会確保が新たに加わりました。
これは70歳への定年引き上げを義務付けるものではありませんが、事業主は以下のいずれかの措置を講じるよう努めることが求められています。
- 70歳までの定年引き上げ
- 定年制の廃止
- 70歳までの継続雇用制度の導入
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
- 70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入
出典:厚生労働省「高年齢者雇用安定法の改正〜70歳までの就業機会確保〜
こうした制度の変化により、多くの職場で従業員の平均年齢は上昇傾向にあります。
高齢の従業員は若年層に比べて健康上の不調をきたしやすく、慢性疾患の管理、体力的な負荷への配慮、メンタルヘルスケアなど、健康管理のニーズも多様化してきました。
雇用を延長するだけでは従業員のパフォーマンスを維持することは難しく、高齢になっても健康で安心して働ける職場環境を整備することが、企業にとって避けられない経営課題と言えるでしょう。
③国民医療費と企業への影響
日本の国民医療費は増加の一途をたどっており、2023年度には約48兆円と過去最高を更新しています。
高齢化の進展とともに今後もこの傾向は続くと見込まれており、社会保障費の増加は国家的な課題です。
こうした医療費の増大は、社会全体の問題であると同時に、企業にとっても直接的なコスト負担として影響します。
慢性疾患を抱える従業員が増えるほど企業が負担する健康保険料は増加し、社会保険料の上昇は経営を圧迫する要因のひとつとなるでしょう。
国として社会保障費の膨張を抑制するためには、国民一人ひとりが健康を維持し、医療機関への依存を減らすことが不可欠です。
そのための実践の場として、企業が従業員の健康管理に積極的に取り組むことを、国が政策として推進するようになりました。
健康経営が国家戦略として位置づけられた背景には、こうした事情があります。
④ワーク・ライフ・バランス意識の高まり
「働き方改革」の広まりにより、長時間労働を強いることは従業員の健康悪化や士気低下を招くという認識が社会全体に定着してきました。
仕事ばかりを優先し私生活が犠牲になる状況は、未婚化や少子化といった社会問題にもつながると懸念されており、企業には従業員の休息やプライベートを尊重する姿勢が強く求められています。
健康経営の取り組みには、こうしたワーク・ライフ・バランスを直接支援する内容が数多く含まれます。柔軟な勤務形態の整備や心理的安全性の確保、社内コミュニケーションの活性化など、「働きやすい環境づくり」そのものが健康経営の実践です。
こうした取り組みが機能しはじめると、「自分は会社から大切にされている」という従業員の実感が生まれ、ワークエンゲージメントの向上につながります。特にウェルビーイングを重視する若い世代にとって、健康と私生活を大切にする企業の姿勢は就職先選びの重要な基準となっており、採用・定着の両面で大きな強みになります。
参考:https://hr.ds-b.jp/what-is-healthy-company/
参考:https://pro.kao.com/jp/kiralia/column/20230925-2/
健康経営の5つのメリット
健康経営に取り組むことで、従業員の体調管理にとどまらず、企業経営にさまざまな恩恵をもたらします。
生産性の向上、人材の確保、財務パフォーマンスの改善、そして対外的なブランド価値の向上など、多岐にわたります。
①健康投資による生産性の向上
健康経営により従業員のコンディションが整うことが直接的なのメリットの一つです。
集中力が高まりミスが減るだけでなく、業務スピードの向上や、新しいアイデア・イノベーションが生まれやすい組織づくりにもつながります。
このメリットを理解するうえで押さえておきたいのが、「アブセンティーズム」と「プレゼンティーズム」という2つの概念です。
アブセンティーズム(疾病欠勤)は、心身の不調によって業務自体が行えない状態を指します。欠勤・休職・遅刻・早退などが該当し、勤怠データで把握できるため、企業側も損失として認識しやすい特徴があります。
一方、プレゼンティーズム(疾病就業)は、出勤しているものの、健康上の問題によって本来のパフォーマンスを発揮できていない状態です。花粉症・腰痛・頭痛・慢性的なストレスなど、一見すると軽微な不調が原因となることも多く、本人が無自覚なケースも少なくありません。数字として表れにくい「隠れたコスト」である点が、アブセンティーズムとの大きな違いといえます。
厚生労働省の「コラボヘルスガイドライン」によると、総コストのうち79.1%がプレゼンティーズムによる損失で、アブセンティーズムによる損失はわずか3.7%にとどまるいうデータがあります。
つまり健康経営への取り組みは、この「見えない損失」を減らすことで、組織全体の生産性向上に直結するのです。
②離職防止と採用コストの削減
健康経営に取り組むことで、「会社から大切にされている」という実感が生まれます。満足度やワークエンゲージメントが高まることで離職意欲が下がり、職場の定着率向上につながります。
反対に、健康やメンタル面の不調を抱える従業員が多い職場は離職率が高止まりする傾向があり、早期離職による損失は企業経営に深刻な影響を与えるでしょう。
企業にとって特にダメージが大きいのが、早期離職です。採用から退職までに発生するコストを積み上げると、その損失は決して小さくありません。
- 採用コスト→新卒採用:約90万円、中途採用:約100万円
- 育成コスト→新卒:約110万円、中途:約130万円
- 新人の教育・研修コスト→約10万円〜
これらを合算すると、一人あたり約200万円以上の損失となる計算です。
健康経営によって離職率が低下すれば、こうしたコストを大幅に削減できます。
さらに人材が定着することで、業務知識やノウハウが組織内に蓄積・継承され、生産性の向上にも波及していきます。
離職を防ぐことは、採用コストの削減にとどまらず、組織力の底上げとして経営全体に還元される投資といえるでしょう。
③企業ブランドと対外的信頼の向上
健康経営への取り組みは、取引先・投資家・社会から「信頼できる企業」として評価され、対外的なブランド価値の向上につながります。
任天堂・パナソニック・JR東日本などの大企業は、サプライチェーン向けにCSRガイドラインを公開しており、ハラスメントの防止・長時間労働の抑制・女性活躍の推進といった項目は健康経営を推進しています。
健康経営への取り組みは、こうした社会的責任を果たしている証拠として評価され、ビジネスパートナーとしての信頼性を高めるでしょう。
また、投資家は「人的資本への投資」を企業評価の重要な指標として見るようになっています。
経済産業省が推進する健康経営優良法人認定の取得や、東証との共同制度である健康経営銘柄への選定は、「ホワイト企業」としてのブランドを確立するとともに、投資家からの評価向上にも期待が持てます。
健康経営は社会的責任を果たす経営姿勢の証明です。
社会からの信頼を獲得し、企業価値そのものを高めていく戦略的な取り組みと言えるでしょう。
④健康経営優良法人認定という経営上の強み
政府は健康経営を推進する制度として、主に2つの認定・選定制度を設けています。
健康経営優良法人認定制度とは
経済産業省が推進し、日本健康会議が優良な健康経営を実践する企業を認定する制度です。大規模法人部門・中小規模法人部門の2区分があり、上位法人にはそれぞれ「ホワイト500」「ブライト500」の冠が付与されます。
健康経営銘柄とは
経済産業省と東京証券取引所が共同で上場企業の中から選定するものです。原則1業種1銘柄と選定数が限られるため、取得できれば業界内での希少な評価となります。
(出典:経済産業省「健康経営優良法人認定制度」)
これらの認定を取得することで、金融機関による融資の金利優遇、自治体の公共調達・入札における加点評価、一部保険会社による保険料の割引などの実務的なメリットが得られます。
また、認定ロゴを求人票・会社案内・営業資料に使用できるため、対外的な信頼性の可視化ツールとしても機能します。
さらに調査によると、健康経営優良法人に認定された企業は非認定企業と比較して売上高の年平均増加率が高く、倒産リスクも低い傾向があることが示されています。
認定を目指すプロセス自体が組織の体質改善につながり、経営基盤の強化に寄与するといえるでしょう。
⑤医療費・保険料の抑制と中長期リスクの軽減
健康経営が生む効果を中長期的な視点で見ると、医療費・保険料の膨張を抑えるという財務上の恩恵なども重要なポイントになります。
企業が従業員1人あたりに負担する社会保険料は年々増加傾向にあります。
生活習慣病などの慢性疾患を予防せずに放置すると、医療費が累積していき、企業の財務を圧迫します。
健康経営の導入により定期的な健診や生活習慣の改善を促すことで、将来の医療費負担を抑制できるでしょう。
また、従業員の健康状態が良好に保たれれば、傷病による突発的な長期休職や、人材の穴埋めに伴う緊急コストも発生しにくくなります。こうしたリスクの積み重ねは、規模の小さな企業ほど経営に直結しやすい問題です。
健康経営は単なる福利厚生の拡充ではなく、将来の不確実なコストを事前にコントロールする、経営リスクマネジメントの一環として位置づけることができます。目先の投資対効果だけでなく、5年・10年単位の財務健全性を守る取り組みとして、ぜひ意識しておきましょう。
健康経営の課題
健康経営を導入するまでには、いくつかの課題もあります。
健康経営を形だけの施策で終わらせないためには、課題を正しく理解したうえで対策を講じましょう。
ここでは、導入時に多くの企業がぶつかる3つの課題を整理します。
導入コストの負担
健康経営の導入には、一定のコストが伴います。法律で定められた定期健康診断・産業医の選任・ストレスチェックといった法定義務だけでも、それぞれ1人あたり年間5,000〜15,000円、月3〜10万円程度、年間500〜2,000円が目安とされています。
従業員50〜100名規模の企業であれば、法定コストだけで年間100〜200万円程度になる計算です。
ただし、すべてを一度に導入する必要はありません。
まず既存の施策を棚卸しして「すでにやっていること」を整理したうえで、厚生労働省や自治体の補助金・助成金も活用しながら、効果の高い施策から優先的に着手しましょう。
担当者への業務負荷
健康経営を推進するには、社内で旗振り役となる担当者が必要です。
具体的には下記の通り
①社内チームや体制の構築
②健康診断・ストレスチェック・有休取得率・残業時間などのデータ収集と分析
③課題の優先順位づけと計画立案
④社内広報や研修を通じた周知・実行
このように段階を追って進める必要があります。
健康経営優良法人の認定を目指す場合は、申請書類の準備や取り組み状況の整理・入力といった作業も加わります。
特に中小企業では専任担当者を置く余裕がなく、人事や総務が本来の業務と兼任するケースがほとんどです。結果として「取り組みたいが、担当者のリソースが足りない」という状況に陥りやすくなります。
対策としては、外部の健康経営支援サービスやクラウド型の健康管理ツールを活用して担当者の負荷を分散させることが有効です。また、最初から完璧な体制を目指さず、できる範囲からスモールスタートすることで、無理なく継続できます。
従業員の参加意識の向上
健康経営は、会社が仕組みを整えるだけでは機能しません。従業員一人ひとりが「自分ごと」として健康に向き合う意識が不可欠となります。
たとえば、ストレスチェックや医師との個別面談が労働時間外に行われる場合、従業員にとって負担に感じることがあります。また、健康診断結果などのセンシティブな情報を会社に提供することへの抵抗感から、取り組みに消極的になるケースも少なくありません。
こうした懸念を解消するためには、取り組みの目的と意義を丁寧に説明し、情報の管理方法・使用目的・アクセス権限を明確にルール化したうえで周知することが重要です。
経営層が率先して取り組む姿勢を見せることで、従業員の参加意識を高めながら実践していきましょう。
健康経営の未来
健康経営は今、大きな転換期を迎えています。
ITの進化によりデータに基づいた健康管理が現実のものとなりつつある一方、国の推進方針や社会全体への普及という面でも大きな変化が起きています。
ここでは、健康経営の未来を方向づける2つの重要な動きについて解説します。
ITの活用
健康経営の推進にあたって、ITツールの導入は欠かせない要素となっています。データに基づいた健康管理を実現するうえで、以下のような活用が広がっています。
①ウェルネスアプリの活用
健康管理用のデバイスやアプリを従業員に支給し、歩数・睡眠・ストレスレベルなどをリアルタイムで収集・分析することで、個人の健康状態を可視化できます。蓄積されたデータをもとに、産業医や保健師が的確なアドバイスを行える環境が整います。
②オンラインメンタルヘルスケアの整備
企業がオンラインカウンセリングの場を設けることで、テレワーク中の従業員も安心して相談できるようになります。匿名で利用できる仕組みにすることで、心理的なハードルを下げ、早期のケアにつなげることが可能です。
③働き方改革ツールの導入
業務効率化ツールの導入により無駄な作業を削減することで、従業員の集中力が高まり、健康と生産性を同時に向上させることができます。残業削減やフレックスタイム制との組み合わせにより、健康経営と働き方改革を一体的に推進するアプローチも有効です。
社会全体への浸透
経済産業省「健康経営推進検討会」によると、今後の健康経営推進に重要な柱が3点挙げられています。
①健康経営の可視化と質の向上
健康投資の効果をデータで示し、取り組みの質を高めていくことが重要です。企業が健康経営に投資した金額や効果を見える化することで、経営判断に活かせる仕組みの整備が進めやすくなります。
②新たなマーケットの創出
健康経営を軸に、国内外でヘルスケア産業の拡大を目指します。日本型健康経営の海外展開と、それに伴うヘルスケアサービスの輸出促進が具体的に動き始めています。
③健康経営の社会への浸透・定着
中小企業への支援強化と、若年層を含む社会全体への普及を進めます。健康経営が「一部の大企業のもの」から「すべての企業のスタンダード」へと移行することを目指しています。
さらに経産省は今後、全国的なネットワークを持つ機関やキャリアセンターと連携し、学生が健康経営を実践する企業と出会う機会を創出する取り組みを進める方針です。健康経営への理解が就職・転職活動の判断軸として定着すれば、企業側も取り組みを強化するインセンティブが高まります。
また、国・自治体でも積極的に取り組む動きが広がっています。2026年度には経済産業省が国の行政機関として初めて健康経営優良法人の認定を取得し、自治体も含めると大規模・中小規模法人部門合わせて計26団体が認定されています。民間企業だけでなく行政機関が率先して取り組む姿勢を示すことで、社会全体への普及がさらに加速することが期待されています。
まとめ
健康経営とは、従業員の健康を「コスト」ではなく「企業成長への投資」として捉える経営の考え方です。生産性の向上・採用と定着の強化・ブランド価値の向上・中長期的な財務リスクの軽減など、取り組むことで得られる恩恵は多岐にわたります。
一方で、導入コストや担当者の負担、従業員の参加意識といった課題があるのも事実です。大切なのは、完璧な体制を目指して動き出せないことではなく、できる範囲からスモールスタートすることです。
健康経営優良法人の認定数は約10年で70倍以上に拡大し、経済産業省も国の政策として推進を続けています。もはや健康経営は「大企業だけの取り組み」ではなく、企業規模を問わない経営スタンダードになりつつあります。
「何から始めればいいかわからない」という方は、まず自社の健診受診率やストレスチェックの結果を確認するところからはじめてみましょう。小さな一歩が、従業員と会社の未来を変えるきっかけになります。
